先回の続きで、地震に強い家づくりです。
私がハウスメーカーで営業をしていた時、時期で言えば、今から7~8年前あたりから、大手ハウスメーカーさんは、先回お伝えした、ガル表示で話をする事が多くなりました。
耐震等級3は当たり前となってきたタイミングの為か、今のハウスメーカーさんは、ガル表示の傾向にあるかと思います。
また、最近、ご相談頂いた方の中で、とあるハウスメーカーさんから
『弊社の家は、耐震等級3の家で、1800ガルまで耐えられる家です。』
といった説明を受けた方がいました。
当然、地震に強い家づくりをするにあたり、こういった表現方法は、独自の表現方法になりますし、耐震等級3以外で差別化をしようと考えた時は、良い方法だと思います。
しかし、その後で、
『だから、弊社の家は耐震等級3以上なんです。』
という言葉が出てきた為に、本当にそうなのか?が判断できず、ご相談を頂きました。
因みに、“耐震等級3以上”という話をしてしまうと、それは営業トークになってしまいますし、ガル表示だから良い!と言う訳ではありません。
詳しくは先回の記事:地震に強い家づくりの基礎知識をお読みくださいね。
では、何故、
- ハウスメーカーさんがガルで地震の強さを表すのか。
- また、その注意点は何か。
を解説していきたいと思います。
実大実験をしている会社さんの強み
先回の話ですが、ガルとは地震加速度の強さの話です。
因みに、私も専門家ではないので、詳しい計算式などはわかりませんが、このガル表示、例えば工務店さんに出して欲しい!とお願いしても、恐らく出てきません。
多分そういった話を工務店さんにしても『???』となると思います。
何故でしょうか。
それは、ガル表示は、実大の耐震実験をしている会社さんしか言えない。
為です。
もう少し詳しく言うと
“ガル表示をしてくる会社さん(主にハウスメーカーさん)は、実際に、モデルとなる家を実大実験で揺らしてみて、その結果の数値を言っているだけ!”
だからです。
3000ガルまで耐えられる家づくりをする為に、こういった家を建てる。
ではなく、
揺らしてみたら、加速度が2000ガルまでは、そのモデルの家で耐える事が出来た。
と言う事で、その結果
『弊社は2000ガルまで耐える事ができるんです!』
というように宣伝する。
といった流れになっていると言う事です。
つまり、この話は少し誤解を生みやすい話なのですが、あくまでモデル棟として揺らした建物に関する数値ですよと言う事になります。
実際の家とは当然ながら
- 間取り
- 窓配置
などは違うので、全てにおいて通じる話でもないと言う事は覚えておきたい所です。
話がそれましたが、まとめると、実大実験をして初めてガルでの表現が出来る。
と言う事になる為、工務店さんではガル表示は出来ないと言う事になるようです。
*もしかすると計算出来るかもしれませんが…
因みに、国内には何箇所かそういった家の実大実験ができる施設があります。
有名どころで言えば、
- 防災科学技術研究所
- 大林組の研究施設
- 鹿島技研
などありますが、それぞれ地震の最大深度や揺れ方など微妙に違ってくる為、そこら辺の細かい違いも本来は見極める必要があるかもしれません。
地震の実大実験はお金がかかるから工務店さんでは出来ない
工務店さんが、実大実験をしないのは、お金がかかるからです。
しかも莫大なお金がかかるからです。
詳しい費用はわかりませんので、あくまで推測ですが…
- そこに家を建てる為に特殊な施工が必要ですし、
- その期間の実験施設のレンタル料、
- 装置を動かす費用、
- その他、データを測る費用など
- 解体も特殊となる
等を考えると、何億円とかかる(もしくはそれ以上??)のかな?と思います。
とは言うものの、
だから一般の建築会社さんが心配か?というと、そうでもないように思います。
その理由として、
今の家づくりの耐震等級に関しては、国が決めていますし、国としては、モデル棟として実大実験をしております。
その上で、国の指標としている耐震等級が出ている為、それを元に家づくりを行うという形をとっていると言う事は、どこでも同じとも言える為です。
また、構造体に関しては、大手の建材メーカーさんであれば、独自に実大実験をしており、その結果などを元に、その構造(金物や柱や梁の太さ)で計算しています。
モデルケースとしての実験は意外とされている事も多いという事ですね。
一部の建築会社さんでは、国が出している耐震の指標等に+αして、個別で構造計算をしている会社さんも多く見受けられるようになってきた為、逆に、様々な計算式をつかっている工務店さんも多くあると言う事です。
この話は、少し逆説的な発想から言えば、ハウスメーカーさんは、その工法・構造が独自だからそういった実大実験をしなければいけない。
という事も一部で言えるような気もしています。
注意点の色々
ではでは、注意点はどうなのでしょうか。
色々な観点からこの話の注意点は言えますが、最もいえる事が、先述した、耐震の実大実験をしても、あくまでモデル棟での設計。
という事ではないでしょうか。
ハウスメーカーさんに限らずですが
例えば、
- 通常の実大実験の家の形は総2階だけど、その他の形にした場合は?
- その実験の窓の多さはどう?
- 家の重さは?屋根材料や太陽光発電は付いてる?
- 屋外の給湯器は?
- 実験装置はどのような揺れ方をする?
など、
様々なチェックポイントがありますし、実際にそれぞれのケースによって、揺れ方が変わってくる為、数値は全て変わってくる事も考える必要もあります。
また、上記のような結果論としての話をするのであれば、
揺らしてみて、その結果を踏まえて改善を加え、また同じモデル棟で同じ揺らし方をする。
という方法をしなければいけませんが、そういった会社さんは私が知る限りありません。
耐震等級3以上は現状では言えない。
以上の事を踏まえつつ、今回ご理解いただきたい最大のポイントとしては、実大実験はあくまで、モデルであると言う事ですね。
その為、一般的な住宅比較において、耐震等級以外での比較は、現状では言えないようにも思います。
つまり、
家の耐震性能を比較するなら耐震等級で比較する
と言う事。
その上で心配であれば、構造計算などをしっかりとかけて、それぞれの家づくりにおいて、国のガイドライン以外でも個別で計算する。
という方法が一番最適な気もしています。
あくまで、実験した結果、ガル表示として、ここまでは耐える事が出来たという表現は出来ますが、それが耐震等級3以上というのは言えないという事です。
その後に、もしその他の数値の比較をするのであれば、
- 木造、鉄骨、RCによる違い
- 木造ならその工法による違い(在来工法、2×4工法、金物工法、ラーメン構法など)
などの“工法による数値の違い”を先ずは意識した方が良いように思います。
さらに、その後
パネル補強部分に関する違い(壁の強さ、量などの違い)
の違いを考えるという話となっていきます。
地震に強い家づくりを考える際は、比較する順番とその整合性を考えつつ、比較検討して頂ければと思います。
ここら辺は、説明される方の認識による違いによって、正確な話をしてくれない事もありますので、少し長くなりましたが、書いてみました。
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